にゃー🐈 ニャロです。
あーあー、そりゃニンゲンに寿命があるんだから、お店にも寿命があるのもしょうがないけどさ。
僕は品川生まれの品川育ち、つまり生粋の江戸っ子でさ。
「江戸っ子だってねぇ、蕎麦食いねぇ!」って言うじゃん、言うのよ。常識じゃんね。
庶民的サラリーマン家庭生まれだから、子供の頃の外食なんて蕎麦屋か町中華限定。高校入試の合格祝いに塾の先生が連れてってくれた焼肉屋さんの旨さに気絶しそうだったし、大学のサークル仲間の北海道出身ガール(多分、ハイソなお生まれ)に連れてかれた池袋の高級フレンチのランチは興奮して鼻血出そうだったし(ってか、出たし)。
そう、つまり、僕の人生には蕎麦が不可欠。
まだスマホも無く、インターネットはノロノロ接続、1MBの写真1枚をドイツから日本に送るのに携帯電話通信経由だと30分かかった時代、週末の楽しみは高速道路で2時間ちょいのストラスブールにケーキやチーズ買い出しに行くことと、蕎麦打ちすること。
出張で日本に一時帰国する度に、蕎麦粉と厚削りの鯖節、アゴダシ、鰹節、昆布、干し椎茸買い込んで、週末に蕎麦打ち。「小麦粉入れるならウドンやパスタ喰えばいいじゃん」って理屈で、最初は長さ3センチのショートパスタならぬ「ショート十割蕎麦」だったんだけど。
お湯で繋いだり、腕も上がってきて(水回しが一番難しい!)、蕎麦粉も新鮮でメッシュ細かいのを厳選したり、段々と上達してくるのが蕎麦打ちの面白さ。蕎麦粉と蕎麦ツユが良ければ、チギれまくってもお味バツグン。
蕎麦は良い蕎麦粉を上手に水回しすればアレなんだけど、ツユがね、また何とも。
出汁がね、とにかく正直。昆布やアゴ(飛魚)ダシ、鯖節、鰹節の投入量が露骨にアジにでるのよ、つまり蕎麦屋が正直に濃い蕎麦ツユだすと、めっちゃ原価かかるわけ。醤油も味醂もアレだけど、とにかく出汁。まさか「白い粉」なんて論外だし。
ってわけで、蕎麦にはウルサイのは当たり前なんだけど。
ここ数年、美味しい蕎麦を求めて、山形や島根や岩手や旅してさ、「蕎麦」だけなら素晴らしく美味しい十割蕎麦の名店の数々にに巡り会えたんだけど。
でもツユがね、蕎麦ツユがね、正直「ダメ」。蕎麦は素晴らしい蕎麦に出逢うことはあるけど、蕎麦つゆは良くても「まあまあ美味しい蕎麦ツユ」。なんともまぁ、とにかく江戸っ子の僕を感動させてくれる蕎麦ツユを出す蕎麦屋、ないわね、びっくりするくらい。
記憶にあるのは、浅草の「並木藪蕎麦」。もう三十年近く前の記憶だけど、あそこの蕎麦つゆはナイスだったわね。
ただ、浅草の「藪」の蕎麦自体は、なんというか、そんなにアレじゃなかった記憶なんだけどね。
そんな蕎麦に迷惑なくらい煩い僕が、全面的に「ここは最高に素晴らしい蕎麦ツユをだす、十割蕎麦も実に素朴に正直に素晴らしく美味しい」お店、どこにあると思う?
なんと、我が住まいがある藤沢市、ターミナル藤沢駅から徒歩4分の駅チカにあるんだかんね。痺れる幸運じゃんね。
そりゃね、小麦粉20%以上混ぜたり、古米古古米ならぬ古蕎麦古古蕎麦やら、中国産ロシア産ウクライナ産の蕎麦粉やら、「蕎麦っぽい」蕎麦屋と比べると安くないけど、少しヌメリのある十割蕎麦の正直さ、ハッキリ言って自分で十割蕎麦打ちしたことあればわかるけど、凄い蕎麦だかんね。どっかの「十割蕎麦?」なお店とは全然違うんだからね!
そして、蕎麦つゆ。ハッキリ言って、僕的に日本一=世界一。食べてみりゃわかるかんね。異常に手間と原価のかかった、正直過ぎる真っ当な江戸前の蕎麦つゆ。初めて食べた16年前、「蕎麦つゆ少なッ!」って驚いて、蕎麦つけて食べて二度驚いたもんね。
今日は、「春の山菜五種の天ぷら」をいただいて。ウド、菜の花、うるい、タラの芽、あとなんだっけ?ウドが特に素晴らしいじゃんね。
ここで頼む蕎麦は、もう毎回同じ。「小天丼セットの小海老かき揚げ丼+冷たい蕎麦(もりそば)特盛り」。
1800円のセットなんだけど、蕎麦特盛りは+450円。高いようで、そうゆう蕎麦粉使ってるかんね。適切な食べ物には適切なお値段が設定されないと、飲食店は倒産しちゃうかんね。
別に、藤沢駅前のナントカって立ち食いそばだって時と場合で「普通に美味しい」こともあるけどさ、24 時間営業だし。でも、あれは「蕎麦風ヌードル」だかんね。なんせ蕎麦比率40%(当然、日本産じゃないし)だかんね。ソレはソレとして。
ここ「すい庵」のお蕎麦ったら、
… 食べなきゃわかんないだろし、食べてもわかんないヒトも当然いると思うけど、蕎麦の香りプンプンの実に正直な十割蕎麦。大好き。
蕎麦つゆはね、かなり濃厚な蕎麦つゆだから、ちょこっとつけるだけでオッケー。だから提供される蕎麦つゆが少なくても大丈夫。
そして、もちろん程よくトロトロの蕎麦湯で割った蕎麦つゆの風味をね、味わいたいじゃんね。これよこれ、盛岡地方の椀子そばみたく100杯食べなくても、この素晴らしい蕎麦湯でお腹を満たすわけ。至福の時間。
天ぷら屋さんの天ぷらみたくカリカリサクサクじゃなくって、モッタリ系のかき揚げにはぷりぷりの小海老が入ってて、ご飯に合うの。お蕎麦の脇役って感じの控えめな小かき揚げ丼、好き。
んでね、今日ダンディなマスターおじさんが厨房から出てきて、「いつもありがとうございます」とかって。そりゃこっちのセリフ。インチキ蕎麦屋とか、ダメダメ蕎麦屋が横行する令和の藤沢で、ここはまさに蕎麦オアシスなんだから。
そしたらさ、「実は、5月いっぱいで…」
…
やだー、でも藤沢の北口で20年ちょい、今の南口で20年、もう40年以上やってきたんだって。そりゃね、見た目はダンディでお若いけど、もう70超えだろね… お疲れ様でした。
あー困った、これは困った。どうすりゃいいんだろ。泣けるし。数年前の「うどん王子」閉店は、経営的にアレだったんだろけど、ここ「すい庵」は土日は入れないし、平日も満席近いんだから、誰か継いでよぉ…
とりあえず、閉店ギリギリまで出来るだけ通って、蕎麦つゆの秘密を教えてもらうしか、ないわね…
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