スナフキンのように気ままなワイン旅 北イタリア2023 #14 ワイナリー訪問『BRESSAN (フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州, GORIZIA)』

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ぐるめ

にゃー🐈 ニャロです。

その昔、「世界の名酒事典」とかをペラペラと眺めてた頃。世界のヒエラルキーは「格付け」だったのよね。「ボルドー1級シャトー」とか「ブルゴーニュ特級畑」とか。

ナチュラルなワインを愛する人類が登場した21世紀は、ある意味で核戦争後の「北斗の拳」的な混沌とした世界になってるじゃんね。そして、「強さ」や「格式」でなく「個性」「こだわり」が求められてるような気がするのって、僕だけじゃないと思うの。

そんな今、エグいほどの唯一無二な濃厚個性と獰猛なエレガンスを感じちゃう激ヤバなワイナリーがフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州のゴリツィアにあるの。『GRAVNER』とかがあるスロヴェニア国境スレスレ地帯じゃなくって、ゴリツィア中心部から西に少し走ったエリアに。

それが『BRESSAN』。迂闊に触れると火傷するかんね、マジで。

今回の旅で出会った人達の中で、ダントツ僕のハートにグッときたのが、ここの親分のフルヴィオさん。「特攻野郎Aチーム」のボス、ハンニバル・スミス大佐の皮肉度数を十倍にして、お腹をドドドーンとでっぱらせた感じ。カッコ良すぎな「激悪オトコ」。とにかく妥協無し。くぅぅぅぅぅ〜!

『BRESSAN』のワインは、間違いなく独特、ユニーク、唯一無二。日本で何回か飲んだ印象は「(赤ワインの香りが)漢方薬みたい」「香り嗅いでも嗅いでも飽きない、魅力的な香り」「余韻が長くって、スマートだけどド根性を感じるワイン」。特に、「漢方薬みたいな香り」は、樽に香木でもいれてんじゃないかってくらいユニークだし、他に無い香り。

だから、訪問して「そのナゾが解けたらいいなぁ」、ってくらいに軽く考えてたんだけど。

でもね、今回の『BRESSAN』訪問では、いろんな人生の大事なことを教わったり感じたかんね。マジで。

まず畑に集合。なかなか集まらない我々ユルユル御一行様。フルヴィオさんがイライラしてんのがビシビシ伝わってきて、怖いから僕はフルヴィオさんの斜め後ろで直立気をつけの姿勢。

鎌倉ペースでゆったりと追いついてきたムーミンパパHさんはアイパッドの動画撮影準備でパッドを操作。MOさんは、iPhoneの同時通訳アプリ立ち上げ操作に必死。

そして、フルヴィオさんが一言。

「オレ(さま)は58才だ。もう若くねぇ、ジジイに近い。でも、葡萄作りもワイン作りも一切妥協しない。だからオレ(さま)には時間が無い。わかるか?」

フルヴィオさんの怒りを感じ取ってる僕だけが、フルヴィオさんの目をみて大きく頷くわけ。イタリアはジェスチャーの国でもあるし。

モチロン、その他2名は、iPadとiPhoneを凝視。そりゃそうだ、動画撮影とか同時通訳とか操作してんだもん。

で、フルヴィオさんは続けるわけ。

「だからな、オレ(さま)がハナシをしてる時に、スマホとかイジってるヤツに使う時間はねぇんだよ。わかるか?オレ(さま)のハナシを聞くんだったら、オレ(さま)の目を見ろ。わかったか、以上」。

そして、フルヴィオさんは僕の肩に手を置くわけ。ぶっ殺されるかと思ったけど、「オマエはハナシの聞き方がわかってんな、それでいいんだよ」って感じ。ビビったぁ…

イタリア語わかってるムーミンパパHさんは視線をアップ。同時通訳アプリを凝視してたMOさんには僕が「とりあえず意味不明でいいから、フルヴィオさんの目を見て〜」と。

まったく、その通りだって僕は思ったもんね。だってさ、畑がどうとか、テクニカルなハナシとかは、インポーターさんの資料とかにバッチリ日本語で書いてあるじゃん。

フルヴィオさんが言いたいのって、めっちゃ単純。「わざわざゴリツィアのオレ(さま)にワイナリーまで会いに来てくれたから、忙しいこの時期に時間とって畑のハナシしてんだから、オレの目を見てハナシ聞けよ、なぁ、じゃなかったらオータとかに日本語で説明聞けよ、なぁ、オレを感じに来たんじゃなけれ帰れよ」って事じゃんね。全く、ごもっとも。

いきなりの先制パンチというか、王の一撃というか。言ってることがホンネだけに、僕にはグッと来たもんね。

で、フルヴィオさん、続けて、

「この畑はとても大事な畑だ。だから、木にも葉っぱにも触れるな、いいな?」

いいぞ〜、葉っぱに触れるなって初めて聞くセリフだけど、フルヴィオさんはそう思ってて、それをそのまま伝えてるんだもんね。

更に、

「子供を放置するな。プレス機とか、ウン千万円以上する機械もある(から壊されたらかなわん)、怪我もする、だから放置するな」。うんうん、そうだよね。

「雑草はロクなことにならない。葡萄にいいことは無い。だから、手間かかるけど、オレは刈り取る。見ろ、雑草無いだろ?」

「雑草生やしてる畑は、時間が無いのか、もしくは手間を惜しんでるからだ。オレは忙しいけど、最高の品質の葡萄栽培に必要だと考えるから、オレ(さま)は雑草は刈り取る。葡萄にいいことが無く、悪さをすることがあるから。以上」。

ふむふむ、自然派ワインって、結構意図的に雑草残したりしてるワイナリーが多い気がしてたけど…

このあと訪問した『NICOLINI』『LA BIANCARA』『IL VEI』で雑草について質問したんだけど、みんな「雑草を刈る… そんな時間も人手も無いし」って。ふむふむ…

更にフルヴィオ節は続くわけ。

「オレは、本当に良い葡萄を収穫したいから、葡萄の木に一本の枝しか残さない。理由は単純、量と質は両立しないから。」

「収量を増やしたければ、枝を2本、3本、もっと残せばいい。ただし、品質は絶対に落ちる。繰り返すけど、質と量は両立しないんだ。」

「他のワイナリーがどうしてるか知らないし、どうでもいいけど、何本枝を伸ばしてるか(仕立てを)見てみれば、そのワイナリーが質を目指してるか量を目指してるか、一目瞭然だ。」

なんとまぁ、簡潔だけど妥協ないフィロソフィじゃんね。

醸造所兼セラー兼出荷場に移動して。

なんとも緊張感溢れるワイナリー訪問だわ。

まさか、このステンレスタンク、トランスフォームしないわよね…

昨日の『GRAVNER』では、「ピジャージュ(混ぜ混ぜ作業)」、人力だったじゃん。尋常ならざる肉体労働だって。

ここ『BRESSAN』では、ステンレスタンクに自動混ぜ混ぜ機構が付いてて⬆。フルヴィオさんの考える「質の追求に、何が必要か」ってことね。ふむふむ…

樽についても、フルヴィオさんのフィロソフィは明確で、

⬆でシェアした通り。樽に使ってる木の種類も色々あるんだって。あの漢方薬っぽい香りは木の種類によるのかな、なんて思ったけど、今回はソレどころじゃなかったから、また次回訪問できたら樽について深掘りしてみたいわ。

フルヴィオさんのお父さん、めっちゃ御爺なのに元気ハツラツ。お手製のハム・サラミを皿盛りモリモリで振る舞ってくれて。しかも、よく歩いてよく喋るし。

「ワシのハナシを聞け〜!」って何度も。こうゆうジジイになりたいわよね。畑での葡萄の木の剪定は、フルヴィオさんとこのパパしかやらないんだって。うほ〜!

さぁ、試飲じゃんね。

どれも最高に好み、ハッキリ言って、僕史上最高にゴクゴク呑んじゃったわ、ワイナリー訪問で。

飲み止まらなかったのが、白葡萄の「ヴェルドゥッツォ フリウラーノ」。こんな贅沢なワインはワインだけでじっくり愉しみたいけど、御爺お手製自家製のサラミと相性抜群で、もう麻薬中毒患者みたく摘んでゴクゴク、摘んでゴクゴクの永久輪廻。

マグナムが開いちゃった「Nereo 1997 Magnum」。ピニョーロって地葡萄使った、とんでもないワイン。木樽で20年熟成って、ポートワイン20年モノじゃないんだから。

木樽熟成の二十年間、月2回「バトナージュ混ぜ混ぜ」して、桑、山桜、西洋梨の3種の木樽をステンレスタンクに合わせて、それを清澄濾過無しで瓶詰め、って…

SO2(二酸化硫黄)添加ゼロ。そして、香りも味わいも若さハツラツ。恐ろしい貴族専用ワインじゃん。こんなの、日常生活で飲んだらバチが当たりそう。背徳のワイン。

相変わらずスマホと会話するMOさん。旅の後半に『BORGATTA』おじいちゃんとこで一人訪問してから変身したけど、ここ『BRESSAN』では雰囲気呑まれちゃってたみたい。そりゃしょうがないじゃんね。

しかしまぁ、なんともお茶目なフルヴィオおじさん。お互いにお腹を叩きあったかんね。「旨いもん喰って呑めば腹は出る、当たり前だろ」って、実に真理。

そして、意味不明なんだけど、「盆栽見に行こうぜ」と、フルヴィオさんと一行は外へ。

… チャンス、ビッグチャンス到来よ。

残ってるのは、フルヴィオさんの奥さんのイエレーナさん。あんまり若く見えるから、研修生か娘さんかと思っちゃった…

イエレーナさん、優しいのよ。「もっと色々食べて、呑んで!」って、言ってないけど笑顔はそういう意味と解釈。「はーい!」、むしゃむしゃ、ゴクゴク。うーん、ブレッサンのワインは自家製サラミと良く合うねぇ(当たり前)。

なんだか、知らない近所のオッサンとか、見学に来たお兄ちゃんお姉ちゃんとか、入り乱れてきたけど、僕は腰を据えて試食と試飲を継続。

どれも素晴らしいし、NEREO 1997はウットリしちゃう美味しさだし、開いてるワインを手酌しまくりなんだけど。

最後の最後まで呑み続けたのは「ヴェルドゥッツォ フリウラーノ」。どんだけ呑んでるんだろ、僕。かなり幸せ。

あ、盆栽ツアーから戻ってきたMOさんも満足気。ここ来たかったんだもんね、良かったね。

ぷはぁ、いっぱい勉強会したわ。色々大事なことを教わったし、最高に幸せなワイナリー訪問じゃんね。

果たして、このあと誰がどこまで運転するんだろ…

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