にゃー🐈 ニャロです。
あーあ、毎年のことだけど、桜が咲くと「春の嵐」が来るのって、お天気の神様の意地悪なのかなぁ。それとも、「いつまでも花見して酔っぱらってないで、仕事に戻れ!」って叱咤激励なのかしら?
自動車業界にも「春の嵐」よね。
新型コロナ騒ぎの反動の半導体騒ぎがまだ尾を引いてんのに、
資源価格は高騰しまくって、自動車業界は大変よね。正確には、自動車部品業界が大変。だって自動車メーカーは利益率維持するための販価値上げできるけど、
素材(樹脂、アルミ、銅、ニッケル、レアアースなどなど)を材料として調達してる自動車部品メーカーは、単純に材料費が上がった分+利管理費を販売価格値上げさせてもらわないと、シンプルに「収益が減る」、損するわけよね。海外からの調達部品や素材は、円安によるコストアップもあるからダブルパンチだし。
でもさぁ、自動車部品メーカー(=「サプライヤー」)からの値上げ申請を全部「オッケー、オッケー、どんどん値上げ申請してよね、その分は年度末までに値引きしてね」なんて、自動車メーカーの担当バイヤーは、絶対に言えないわけよね。
だって、一部の日系自動車メーカーの購買部署の最重要「KPI(業績評価=昇格やボーナス査定に直結)」は「年度末に、期初価格を100として、いくら(何%)値下げさせたか」なんだから。社内的に値上げ予算の承認を得てない値上げは、「KPIの逆数(要はオウンゴール)」なんだから。
部品サプライヤーのサラリーマン営業が、値上げ申請をする先は、お客さんの購買部署(担当バイヤー)。手強いゴールキーパーというか、偉そうにしてる割には権限が無い下っ端歩兵というか。
恐らく、自動車メーカーとサプライヤー間で、そこらじゅうで発生してる地獄絵図は、こんな感じ↓
材料コスト高騰で株主様に約束した「決算(収益)見通し」が未達成になりそうなサプライヤー経営者は、当然、営業担当執行役員に「さっさとお客さんに値上げを認めてもらってこい、このままだと営業利益未達でアホ経営者になってまうやないか! ぶっ殺すぞ」ってヒステリックに命令するじゃんね。しかも「市況が上がってんだから、お客さんは認めてくれて当たり前」って思い込んでるし。
一応、なんとなくお客さんへの説明資料をサプライヤーの営業チームは作成して、値上げ申請をお客さんの担当バイヤーに提出。ネット会議なんかで資料説明して、「何卒、値上げのご了承を、おねげえいたします」と要請。
担当バイヤーは、「ふんふん、では検討しますので、お待ちください」って打ち合わせを切り上げようとするんだけど、サプライヤー営業から「ええと、畏れ多いのですが、ご回答はいつまでに頂けますでしょうか… 役員にせっつかれてまして…」なんて聞かれたりして。
でも、そもそも値上げ申請が妥当だろうが何だろうが、自動車メーカーの歩兵バイヤーには値上げ権限なんて無いんだから、「わかりませーん」の一点張り。
いっつも「今日中見積り提出しろ」とか「今週中に値下げ合意しろ」とか、サプライヤーには期限厳守を命じるのに、自分は「期限? しらねーよ」とジャイアニズム漂うバイヤー様。
そして、「ヤバい3.5流 担当バイヤー」は、サプライヤーからの値上げ要請を放置。もしくは「塩漬け」。面倒な仕事は後回し、机の上は溜まった書類の山。その中に埋もれて…
KPI達成(=値下げ)するバイヤーは、出世するバイヤー。それはそうだけど、プロのバイヤーって、「妥当な価格」を支払えるかどうかだからね。だって「バイヤー=適正な価格を査定して買う」職業じゃん。
サラリーマン バイヤーが何を目指すかだけど、僕は「買い叩きバイヤー」ってダッセぇなあ、って思ってたなぁ…
「まともな担当バイヤー」はサクッと値上げ申請書類とエビデンスを査定して、妥当だって判断したら上司の購買課長に相談。ただ、購買課長にも、購買役員にも、値上げ権限無いから、基本的な購買課長の指示は「なんとか、値上げ申請を取り下げさせる方策やロジックを考えて、サプライヤーに押し返せ」。
そもそも、デフレが25年くらい続いてんだから、バイヤーどころか購買管理職だってキャリアによっては値上げ経験ゼロって感じだもんね。ある程度、仕事が「出来る」管理職じゃないと、値上げすべきって考えても諦めちゃうってケースもあるかも。
一向に担当バイヤーから連絡が無いから、営業マンがお伺いを立てると、「ちょっと待て」「今、検討してる」「もっと説明資料を出せ」と時間稼ぎした末に、「残念ながら説明不足なので、値上げ無理」とか、「値下げを▲10%追加してくれたら、そのうちの5%は値上げしてもいい(… 悪徳代官的な手法)」なんて、「下請法対象企業」には絶対言えないダークゾーンな回答で案件クローズさせようとして。
で、それを持ち帰って営業が上司や役員に報告すれば、当然「バカか? 早く値上げ認めさせろ!」と、輪廻は続くわけ。まさに「ブルシットジョブ」の代表格。
実際、よほど「値上げしないと、自動車メーカーが損害を被る」って案件じゃないと、値上げは社内承認されないのよね。値上げ予算の承認部署は購買部門じゃなくって経理部門だから。某 厚木の自動車メーカーの場合は、経理部門が予算承認した値上げはKPI評価の対象外。フランス系自動車メーカーは、為替も、銅・アルミや樹脂市況変動までKPIの内数だから、材料市況が値下げ方向だったり為替が値下げに寄与したら、KPI達成しちゃうって変な仕組み。ゲームに勝つにはゲームのルールを熟知しないと、だからお客さん飲みに行って情報収集しないとね。
「東日本大震災」みたいな災害があって、サプライヤーが「ラインストップを避けるために通常トラック輸送なのを空輸した」とか「金型が壊れたので、特別な製造方法で追加コストが発生した」なんて場合は、自動車メーカーとして認めないと社会的制裁の恐れがあるじゃん。そういう場合は、案外やりやすかったりするんだけど。
アルミや銅みたいな「インデックス材」だったり、自動車メーカーが直接 鋼材メーカーと価格交渉する鉄は、妥当性は別にして毎半年に市況価格改定をやるルールだけど、通常 市況価格改定をやる取り決めにしてない素材の値上げは、難易度高いわよね。サラリーマンなんて「前例主義」だから、そもそも値上げの前例のない部品や素材だと、マヌケなバイヤーはお役人様みたいに「前例が無いんで、無理っすね」って。
さらにマヌケなサプライヤーだと、「お客さんが無理っていうんじゃ、無理だな」って値上げ申請も補償申請もしないで、収益悪化させて、倒産。
株式投資をするのに、購買(発注サプライヤーを選定する仕事)って、めっちゃ大変だけど、めっちゃ良いお勉強できるお仕事なの。だって、同じ要求や引き合いに対して、複数の1流(& 2流)の部品製造企業が、全く異なるリアクションしてくるから、企業って経営者のマネジメントで成績が全然違う理由がもろに見えちゃうんだもん。工場だって、企業によって全然違うし。
営業さんもピンキリで、とてもかなわない超一流営業さんも少数だけどいるから、めっちゃ参考になったし、チンパンジーレベルの「… サラリーマンで雇用してもらえて、良かったね…」って3.5流以下の営業リーマンも結構いるんだから。面白いんだから。
だからね、購買やってんのに、「株式投資はETFが安心だぜ」って、もったいないなぁって思うし、多分出世街道爆進してるから副業に費やす時間が無いんだろうなぁ。
話を戻すと、自動車メーカーの購買がサプライヤーの「値上げ」を認めるのは、3パターンあって。
パターン①A
他のサプライヤーから予算以上値下げを勝ち取って、余った予算を値上げに充当する。担当購買チーム内で完結させられる(経理部門や購買管理部を巻き込まなくていいからシンプル)。ただ、購買の値下げ予算(KPI)って厳しいから、余程の錬金術を習得した購買課長の担当購買チームじゃないと、運次第。よほど、お客さんと良好な関係じゃないと無理
パターン①B
当期予算達成しそうだけど、来期予算(値下げ)が厳しいとき、「来期、▲6%値下げコミットするなら、今期の期末に値上げを認める」っていう、錬金術のBパターン。これも担当の購買課長さん次第ね
パターン②
正攻法パターン。ゴリゴリにロジックとエビデンスを積み上げて、担当購買チームの課長だけじゃなく部長級にもアポイントとって、自社の営業執行役員あたりを連れてって「絶対に引けない」ってことを宣言させて。すんごい仕事量が増えちゃうけど、しょうがないわよね…
ただし、「勝てるロジック」が無いと、完敗するからね、要注意。たとえば、部品にモーター入ってる「パワーウィンドウ」とか「ヘッドランプ」とか。
モーターには「銅線(コイル)」が巻き巻きされてんじゃん。銅価格が、上げ上げじゃん。そんなの値上げ申請したら、「そもそも、見積りに銅の重量も単価も記載してないじゃん」「過去に銅価格が値下げしたときに、値下げしてないじゃん」「今度のソーシングで、モーターの銅重量と銅線の重量単価を記載すれば、今後の新取引からは価格の上げ下げさせてもいいよ」って弾き返されたら、まぁ負けね。それはバイヤー側のロジックが正しいんだもん
パターン③
これが、一番成功事例が多いパターンよね。外資系サプライヤーの得意技「値上げ認めないなら、納入止める」。そうなのよね、「お願い」「値上げしてください」って、相手に「損してください」ってお願いなんだもん。やだよね。当然、回答は「やだ、認めない」。
ビジネスは、原始人のぶつぶつ交換と一緒。「値上げ認めないと、そっちが困るよ、どうすんの?」って交渉しないと、ボランティアじゃないんだから。銀行に土下座してもお金貸してくれないのと一緒。
もし、勝てるロジックが無いなら、この手段しかないわよね。「納入止める」。本当に、値上げ認めてもらえないと倒産する状況なら、脅しかまして発注止められたって、赤字倒産したって、一緒じゃんね。
実は、購買にとって、既存サプライヤーが倒産するのって、絶対に避けたい地獄のアクシデント。だって、自動車は部品が一個無かったら出荷できないんだから。半導体不足騒ぎで、みんなしみじみ理解したわよね。
倒産したら、量産車種が止まっちゃうし、量産終了のサービス部品なんて「量産終了から15年間供給する義務がある」とか意味不明な闇ルールを日系自動車メーカーはサプライヤーに押し付けてるから、むしろそっちがキツイに。
量産車種なら、そこそこ売れてれば、同業他社に頭下げて、金型とか受け入れてもらったり、コンパチ部品を作ってもらったり。えぐい価格じゃなければ、受けてもらえることが多いけど。
サービス部品なんて、年間10個とか、「ハコスカの部品」とか、絶対無理。でも、お客さんは怒るじゃん。「まだ量産終了から五年なのに、なんでランプ交換できないんだよぉ!」って。
だから、そこそこ商売がある自動車部品メーカーは、どっかが合併したり。色々裏取引込みで。
話を戻すと、本当に「リアル赤字」になっちゃうような、材料コストアップや台数激減影響があったら、「もう潰れるんで、値上げするか、御社も弊社も共倒れするか、どっちがいいっすか?」って、攻めの値上げ交渉もアリだと思うなぁ。外資系サプライヤーが、上手く値上げを勝ち取ってるのって、「じゃあ納入止めます」っていう、客先購買が一番嫌がる(困る)交渉をしれっとやるし、脅しじゃなくって本当にやるから。競争力があって、なかなか競合他社に切り替えられないって自信があるからってのもあるけど。
なんかね、僕はそうゆう交渉の修羅場が好きで。まったく台数出なかった某スカイラインの「ステアバイワイヤー」のxxx億円の費用補償請求交渉とか、LEDの不灯リコール費用交渉とか、率先して絡んでたから、何気に経験値高いのよね。
だから、『ココナラ』で小遣い稼ぎに営業コンサルでもやろうかって思ったんだけど、
やっぱ… ねぇ…
自動車関係の仕事するより、波乗りしてるほうが幸せだから、やーらない。ハハハ~
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