にゃー🐈 ニャロです。
なんかね、ワインのイベントって、飲むイベントがほとんどなんだけどさ、さすがは早稲田大学。意味不明なことに「飲まないワインイベント」を仕掛けてきたの。
「ケッ、飲めばわかる、飲まなきゃわかんないじゃん」って思ったんだけど、パネラーに…
我らがアイドル、大岡さんがパネラーだなんて、こりゃ一大事。行くしかないじゃんね! ってわけで、鵠沼海岸から延々二時間弱の都の西北、早稲田大学に潜入してきたの。
ってかさー、大岡さんって、知らないの? ほら、コート・デュ・ローヌ北部のコルナスってエリアで、素晴らしいワインを作ってくれてたオジサンで、
何年か前に岡山県に引っ越ししてワイン造りしてる、僕的にはアイドルなわけ。
見たことあるんじゃない? ↓のラベル。
北海道の余市や空知の素晴らしいワインって、なかなか手に入らないけど、当時の大岡さんのスタンダードなラインナップ「ル・カノン」は、かなり買いやすくって、結構な本数が日本に来てたはずなの。
困ったら「ル・カノン」、ハズレ無し的な安心安定なじんわり旨いコート・デュ・ローヌのワインだったのよね。近所の焼き鳥屋さんにも置いてたし。
大岡さんのローヌワイン、はっきり言って、大好き、だーい好きだったの。累計で30本以上飲んだわよ、「コルナス」は飲んでないけど「サン・ジョセフ」とか「SC(シラー・カベルネソーヴィニヨン)」とか、安定の喜びナチュラルワインだったの。
そんな大岡さんの岡山県で造ったワインを、つい先月飲んだの。一口だけ…
そんなタイミングで、今回のイベントに大岡さんが岡山県から来るってんだから、はっきり言って嬉しくって。一時間前に早稲田大学の会場教室に入って正面最前列の一列後ろに陣取ったわ。こんな前の席、大学時代には絶対座んないじゃんね。カンニングもお喋りもできない真面目席。
冒頭で、ピントずれた大物らしいフランス帰りのお爺さんの「自然派ワインとは何ぞや」って説明があったんだけど、見事にピントずれした説明で痺れちゃった。まあ、いいんだけどね。
で、まずは小山田さんのプレゼン。お題は「なぜ自然派ワインを作っているのか」。
小山田さんのお話も面白かったけど、ちょっと難解。へーって思ったのは、「最初にナチュラルワインで美味しいと思ったのはクルトワさんのRACINEだった」って話。
小山田さんのお話は、ヤング時代からの歴史的なお話が半分、影響を受けた書籍についてが半分。フムフム…
さ、いよいよ大岡さんのプレゼン。お題は同じく「なぜ自然派ワインを作っているのか」。フムフム、気になるわよねぇ。
大岡さん、まず最初に「成功したときに“美味しい”と思うから」、って。いいわ、実に自然体で納得できるお話じゃんね。
そして、フランスでの過去をお話してくれたの。ボルドー大学の醸造科でお勉強しながら、いわゆる「名門ワイナリー」を一通り回ったあと、自然派ワインに出逢って、美味しくってびっくりしたって話とか、ティエリー・アルマンさんとの話とか。
で、コート・デュ・ローヌのコルナスの耕作放棄地を開墾した話(ローヌ北部だと、2000万円はかかる畑購入費用が、20万円くらいですんだとか)や、自宅も手作りで、とか、最初の年のワインはティエリーさんが直ぐに売ってくれた話とか、その後の不作で困ったって話や、やっぱりボルドー液だけは芽が出る初期だけは必要だったって話とか。
で、三人のお子さんたちを日本で育てたいって理由で日本に帰国したんだって。うーん、そうゆうことだったのね…
興味深かったのが、「なぜ岡山県か」ってお話。大岡さん、「梅雨がない北海道が圧倒的に素晴らしいと思ったけど、年取ってから雪掻きやるのは避けたかった」って。リアルじゃんね。
で、「北海道以外で雨が少ないのが岡山県と香川県」って説明。へー、香川県は中学生の地理の教科書の「ため池」とかって習ったけど、岡山県もなのね。
そして、岡山県の土壌とか、台風が直撃しにくい理由とか、岡山県誘致課の課長さんみたいなプレゼンが…
で、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」について。これって日本改良種じゃなくって欧州ヴィニフェラなんだって。知らなかったわ…
で、欧州ではワイン用途なマスカット・オブ・アレキサンドリアを日本では食用にしてきたんだけど、なんせ手間で病気がち。で、最近のヤング農家は手間が少なく市場価格が高いシャイン・マスカットに転向してて、そんななかで「今さら植え替えても余生短いし」的なお爺たちに「ワイン用だから、果皮が食用みたいに綺麗じゃなくていいから、作って売って」って。で、古木なマスカット・オブ・アレキサンドリアを買ったりしてるんだって。
欧州対比で降雨量が多い本州では、欧州品種なマスカット・オブ・アレキサンドリアはどうしても発芽以降の初期段階でベト病とか病気がちだから、ボルドー液をこんな量使ってるよ、ってお話も。
ちなみに「ボルドー液」ってのはね、「農薬だけど化学農薬じゃない、自然派ワインでの使用認められた農薬」っていう、やや難解な液体なんだってさ。
更に「ガラス温室」のお話。
この「ガラス温室」、雨に弱いマスカット・オブ・アレキサンドリアに雨が当たらないようにって昔から使われてたんだって。根っこは温室の外だから水を吸えて、枝は温室内だから葉っぱにも葡萄の実にも雨が当たらないって仕組み。文化遺産じゃんね。
今は、シラーとか、ヴィニフェラを植えてるんだって、ちょびっとだけ。
で、話は「小公子」っていう山葡萄品種に。
大岡さんのワイナリーの赤ワインの主力は現状「小公子」なんだって。で、具体的な栽培法とか考え方をお話してくれて。ほんと、現場の人の生のお話って、リアルで興味津々だし、畑にお伺いしてもここまでじっくりお話聞ける機会はそうそう無いもんね。
で、ここから話は「新品種作り」の話になって、ここ何年か大岡さんが地元の葡萄新品種作りする人と一緒に取り組んでるって話、そして開発した新品種の実際の栽培に取り組んでるって話。へー。
で、ここから岡山県のワイナリー設備の話に。今後新規参入してくるヤングたちを考えて、安く設備投資してみたんだって。色々と広い視野で考えるオジサンなのね、大岡さん。
更に更に、地域住民を巻き込んだ活動だったり、
収穫後の葡萄踏みを地元小学生(全校生徒20人… 過疎化なのねん)にやってもらったり。で大岡さん「子供のころの香りの記憶脳に刻まれるので、彼らから次世代のヴィニェロンが生まれたらいいなぁ」、だって。痺れるぅ!
更に話は柑橘酒に。東~北日本だとリンゴのお酒「シードル」作りで醸造タンク等設備の稼働を増やして、設備投資回収に当てたりできるけど、西日本じゃ難しい、ってんで、柑橘酒にも取り組んでるんだって。
柑橘酒、こないだ醸造したらなかなか美味しかったんだって。レモンが合う料理にバッチリ合うお酒なんだって。大岡さんの柑橘酒、飲んでみたーい!
そんなこんなで大岡さんのプレゼンが終わって、四人の登壇者たちのパネルディスカッションっての? まぁ、早稲田の教授爺さんがドイヒーなんだけど、聴講者からの質問への回答とか、興味深かったやり取りはね、
質問 : 大岡さんが考える「偉大なワイン」とは?
大岡さん「美味しいワインは、努力したりテロワールに適合する葡萄品種を見つけることで、日本どこでもできると思うけど、『偉大なワイン』には『偉大な土壌やテロワール』が不可欠だと僕は思う。僕にとっての『偉大なワイン』ってのは、グラスの中に神様がいるような、思わず跪いてしまうようなワイン」… くぅ~、かっこいい! 今度真似しちゃおっと。そういや、こないだ飲んだ大岡さんの「マスカット・オブ・アレキサンドリア」のワインは、神様は居なかったけど、グラスの中に優しい天使が入ってたような気がするわ…
質問 : 大岡さんは岡山で、もっとヴィニフェラの栽培に取り組まないのは何故?
大岡さん「日本の気候、湿度と雨量から考えると、岡山県での栽培にや日本品種が適切だと思う。ヴィニフェラを栽培するにはコストがとってもかかるから、ワインもとっても高いものになってしまうし、ペイしないんじゃないかな」
質問 : 自然(畑)と人間が対等だとすると、人間が畑を改良したり手を加えることは人間が畑より上になるようで、齟齬があるように思えるが、どう考えるか
大岡さん「それは明らかに違う。農業は人間の都合でやることで、人間が上じゃないと成立しない。少なくとも自然な山葡萄を摘むだけなら農業でないし、子供三人の教育費だったり、家族を養えない。お金が許すなら、とことん畑に手をいれたい。一方で、醸造には可能な限り手を加えたくない。いかに手をかけずに葡萄をワインボトルに移したいって考えている」
質問 : 大岡さんの岡山で作っているワインは人気がありすぎて、飲みたくても手に入らない。この状況をどう考えるか
大岡さん「自分も、フランスでワイナリーを始めたころはとても苦労した。最初から人気があったわけではない。自分の手が届かない、満足できないワイン造りをするつもりないし、岡山県でも若手のワイナリーが頑張って増えてきているので、色々飲んで欲しい」
… 実に楽しくって勉強になった二時間半だったわ。絶対岡山の大岡さんの畑に行きたいなぁ。
鎌倉に帰って、ホームグラウンドの『SO SAN』で一杯だけ。ふぅ、落ち着いたわ。
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