にゃー🐈 ニャロです。
トルコ経由でミラノについて、若干面倒なレンタカー借りれて、旅の一行は第一目的地のトレンティーノ・アルトアディジェ州に向かうわけだけど。何故か海外から接続するとブログを更新できないって技術的問題に直面したわけ。
だから、もう、現時点で、2週間の旅は終わって、もう日本に帰国したのよ。ハハハ〜。
だからさ、今回は「北イタリアで13泊して昼夜食べて呑んで繰り返した中で、最高のナチュラルワインセラーを持つレストランで、何を呑むのか」という、どう考えても恥ずかしい、けど重大な問題についてお話したいと思うわけなのよ。いいでしょ?
イタリアでさ、最高にイカしたナチュラルなワインを醸造してワイナリー兼ご自宅で、マンマお手製のお昼ご飯をいただいて、そこのワイナリーのワインを呑みながら、醸造してるオーナーや当主さん家族とお話したりすんのが最高なのは当たり前だけどさ。例えばヴェネト州の『LA BIANCARA』とかでさ。
でもでも、そうじゃなくって、イタリアの飲食店、リストランテやトラットリアやオステリアでさ。目ん玉飛び出るナチュラルワインの品揃えしてるワインセラーを目にしちゃったとしてさ。「今日のランチは一本だけよ〜ん♥」って状況になったら、どの国のどこの地方の、どの造り手さんの、どうゆう造りの、どの葡萄を使って、何年のワインを、どうやって選ぶ?
… そんなの、わかんねーよ、ってのが正解かもしんないけどさ。じゃあ、その飲食店のソムリエさんとかに「お任せします、料理に合う感じで」、とかってカッコつけて頼んだら、ギンギラギンに新樽の濃厚バニラな風味な赤ワインが登場したら納得できんのかーっ、って話。
今回、北イタリアのトレンティーノアルトアディジェ州〜フリウリベネチアジュリア州〜ヴェネト州〜ロンバルディア州〜エミリア・ロマーニャ州〜リグーリア州〜ピエモンテ州と旅した中で、悶絶激ヤバい年季ガッチリ入ったナチュラルな天国級のワインセラーをドーンと擁してた飲食店は、特別に教えちゃうけど、
ピアチェンツァって北イタリア エミリア・ロマーニャ州の街、人口約10万人だから、湘南の藤沢市より小ぶりなサイズの町じゃんね。
ポー川の流域には、いわゆる「クラテッロ・ディ・ジベッロ」なる、膀胱で包んだ豚のおケツハムが有名だけど、ポー川の北はロンバルディア州なのよ。南がエミリア・ロマーニャ州なの。
真面目に『美味しんぼ』で勉強した僕みたいな漫画エリートなら常識なんだけどね。
で、そのエミリア・ロマーニャ州のピアチェンツァって町の南に10km、藤沢でいったら長後みたいなド田舎の郊外に鎮座する『Ostreria fratelli Pavesi』っていう、宝箱みたいなオステリアがあって。
ってかお名前はオステリア(=居酒屋?)なんだけど、
その昔の農業集団の集まりの建屋と、超クールな中庭を生かしたお店は、そんじょそこらのリストランテなんて比べ物にならないカッコ良さで、
恐ろしいクオリティのエミリア・ロマーニャのお料理が出てくるだけでも空恐ろしいのに、
ここのワインセラーときたら、敷地内の独立した倉庫を活用してて、外観だけでもめっちゃカッコイイのに、
ナチュラルなワインのマニアといっても過不足無し、職も無し、ヴィナイオータ情報ベースの蘊蓄は濃厚なMOさんが、我を忘れてセラー内で「うわぁ、バローロの●●のバックヴィンテージ揃ってるぅ!」「うぇっ、ギョエ〜!なんじゃコリャ、もうここに骨を埋めたい♥」と気味悪い喜声上げてセラー内をウロウロ、オーナーファミリーのワイン担当のおっちゃんは気を良くしてニヤニヤ。ナチュラルな変態たちは万国共通だって再認識。
⬆、ワイン屋じゃなくって、オステリア敷地内のワインセラー倉庫内だかんね。なんでワインセラー内にガラスケースがあるのかって、そりゃ「変態」だから。シンプル、それがイタリア。
日本のナチュラル系ワインの変態代表MOさんは、完全にお昼ご飯のことは忘却しきって「これ、何本か買って帰れないすかね?」「ウォッ、こんなヴィンテージ!スゲ~…」って悲鳴と奇声あげながら、そこらに積まれてるボトルを触りまくり。某藤沢市の某ワイン屋さんだったら即刻国外追放永久出入り禁止処分なる振る舞いなのに、
言葉の壁を超えて、変態たちはワインの並ぶ棚の前でイチャイチャ。言葉全く通じて無いのに、この距離感。ボトル眺めて造り手の名前連呼だけで愛は成就するのがイタリア。ってか、昼飯どーすんのよ…
この日は、旅のメンバー5人のうちのムーミンパパHさんは、家族3人で花の都フィレンツェに別行動。レオナルド・ダ・ヴィンチ博物館に向かってて。
つまり、カポ・ソムリエ不在。ってことは、ってことはですよ。現時点、今回のセコンド・カポソムリエは、僕じゃん。
この、異常な魔ナチュラルっぷり全開のワインセラーで、お昼ご飯に渾身の一本を僕がセレクト(scelgo)するわけ。痺れるじゃんね。
ちなみに、「なぜ一本?」かって、そりゃ、僕がドライバーだから。飲酒運転はイタリアでも違法。遵法精神に溢れる僕は、どんなに偉大なワインでも、運転する前は薫りを嗅いで愉しむことしかできないからなのよ。当然よね。
さぁ、「これ、呑みてぇ〜!」「でも、これも気になるぅ、うううう」と、セラー内に虚しく響くウダウダ煩いMOさんの声をココロから完全に排除して、いざ選ばん!至高の一本を!
… とりあえず、食事のワインだし。何を食べるは大事よね。ここはエミリア・ロマーニャ州、しかもポー川から遠くないし、プロシュート系列は確実に注文するし、生パスタはクリーム系列か肉ソース系列。つまり、紅白歌合戦だとしたら「紅組」に軍配があがるっぽいけど、でも軽めの薄っすら赤がいいんじゃないかしら。きっとそうよ、だって僕って「日本ソムリエ協会」認定のワインエキスパートだもん。正確には、バッジと会員登録代金の4万円払ってないから、微妙だけど。
なんせ、まだここの食事のメニュー見てないし。さっき予約無し飛び込みで入れてもらって、素敵なお庭のテーブル席について、恰幅のいいオッサン(オーナー家族のワイン仕入れ担当)に「うちのセラー見るか?」って言われて、「チャオチュール」で釣られる馬鹿猫の如く飛びついたんだもん。にゃぁ…
でもね、セコンド・カポソムリエの僕には、カポ・ソムリエのムーミンパパHさんや、自称「注ぎ手」MOさんには無い、特殊能力があるのよ。最高の一本を選ぶ、X-MENの如きミュータントな能力がね。ぐふふ…
それは、それはね…
一番そのセラーのワインを知ってるオッサンに、熱くしつこく「これくらいの予算で、強すぎない柔らかい素晴らしい赤ワインで、ナチュラル感抜群で、オッサンが最高だと思うワインってどれ?完全に任せるから、気合いれて選んでよね」って全信頼を伝えること。これしかないわよ。
だってさ、ここのセラーみれば、どんだけオーナーファミリーの一員のこのオッサンが、ナチュラルなワインを長く熱愛してて、
セラー内のワイン達を溺愛してて、「イヤイヤ仕事」じゃなく「ラブラブワイン」してるって、秒でわかるもん。だったら、カッツォみたいな豆知識や経験依存の常識は投げ捨てて、オッサンにキツく甘えればいいじゃん。
で、「予算は50ユーロ、いや100ユーロ、いやいや、オッサンのオススメならいくらでもいいからヨロシコ」って伝えたらさ、「地元エミリア・ロマーニャのがいいのか、イタリア全土から?世界どこでもいいか?」って。
セラー内には、ボルドーもブルゴーニュもアメリカもあって。特にイタリア国外だとフランスのジュラ地方のワインが多く見えたから、「それもお任せ。地球上のワインで」って即答。
で、オッサンがまず持ってきたのが、
フランス ボジョレーエリアのガメイ。レストランで呑む価格で40ユーロ。ふむふむ、いいじゃないですか、エミリア・ロマーニャでボジョレーのガメイ。新鮮だわ。
ただ、さすがはイタリア屈指の変態オーナーファミリーソムリエ、僕の顔が満面の笑みになってないことに、あの天才SF作家E・E・スミス様の不朽の大作「レンズマンシリーズ」に登場するレンズマンなのか、察知したみたい。オッサン、やるなぁ…
で、あーだこーだ、セラー内で肩を抱きあいながら、最終的に選ばれたのは、
眼鏡のMOさんがどんな心境だったのかはわかんないんだけど。
フランス、ジュラ アルボワの赤。21年のピノ・ノワール主体の、「これ、120ユーロだぜ、どうだ?」って。はい、これ呑むぅ〜。
『Ostreria fratelli Pavesi』は、エミリア・ロマーニャだからなんて説明はできないギンギラギンな生パスタ(MOさんは、パスタ➡肉(鹿肉ステーキ)➡パスタと禁断のパスタおかわりしちゃったくらい凄いパスタ)も、自家製クラテッロ的なハムも、ドルチェも、隣のおじいちゃん二人が瞬殺で食べきって帰っていった「カッポンマーグロ」的前菜やら、もう1週間滞在したい料理屋さんなのに、
この軽やかで繊細で高貴だけどチャーミングな酸っぱさが気持ちいいアルボワの赤ワイン、乾いた6月のピアチェンツァ郊外の日陰の空気だと薫りの立ち上がり方もパワフルでスマート。
要は、素晴らしく美味しいんだけど、一緒に呑んでるMOさんが、やたら自分ばっかりがぶ飲みして、挙句「やっぱ、セラーのさっきの、どうしても呑みたい!いい?いい?」… 好きにすりゃいいじゃん、大人なんだから。僕は運転手だから呑めないし。
なんか、思い出しちゃったなぁ… 27年前のシエナのトラットリアで、僕のキジレバーのテリーヌを掠め取ろうとした同行者の手の甲に、怒りと憎しみでフォーク突き刺したあの冬の日を。
ほんと、世界中で戦争や紛争が絶えない理由がわかった気がするわ…
近所の「La Stoppa」手書きラベル2010を分けてくれたから、一応はMOさんも一息ついたみたい。ワインの変態との旅は面白いけど大変だわ…
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