ボンジョルノ…
って、寝ぼけててもイタリア語を呟いちゃうイタリア旅の14日目、窓からみえるモンフェラートの葡萄畑は濃厚な霧に包まれてんじゃんね。
今日は、バルベーラの大御所的ワイナリー「Case Colini」を訪問するわけで、まずはご近所Costigliole d’Asti中心部のバールでカプチーノして、そっからクルマで…
たった5分でCase Coliniに到着。だって、住所が
Str. S. Martino, 8, 14055 Costigliole d’Asti AT
だもんね。
大御所だったお父さまLorenzoさんが亡くなって、今は息子さんのGuidoさんが当主なんだって。
で、ほぼ同い年なのかなー、なんだか気の合う気さくなお兄ちゃん的Guidoさん。
「今日は時間あるから、なんでもできるよー。ナニがしたい?」
「ムム、そりゃありがたい。たくさん知りたい事だらけで。まず、ナニが何でも畑見せて欲しいです。畑いっぱい歩いて、いろいろ見せて欲しいです。もし時間あったら、醸造所も見せて欲しいです。あと色々質問もありまーす」
「そっかそっか、じゃ足元ビシャビシャになっていいなら、まず畑行こうか」
ってんで、愛犬ブリックと一緒にグイードさんのクルマに乗り込んで、まずは10分くらいのBarlaの畑へ。
やば、畑入って十歩あるいただけで、スニーカービシャビシャ、靴下まで浸水。
雑草(イタリア語でエルベッタ Elbetta)が半端ない。もしゃもしゃ生えてて、しかも背も高くて、朝露でしっとりどころかじゃぶじゃぶ濡れてて。
ブリックは大喜びで走り回って、すでに全身ビシャビシャ。濡れタオルみたい、しかも走り回って熱こもって蒸れ蒸れ、臭そう…
相当ビオディナミ信仰が深いトレンティーノのTropfltalhofの畑もワイルドだったけど、比じゃない雑草の生い茂りっぷり。
収穫終わって落葉前ってのもあって、正直、耕作放棄地かって思っちゃうくらい、ワイルド。
こりゃ、足ビチャビチャだけど、歩きながら色々聞かないとね。
「畑の廻りの木々もね、ブドウに影響してるっていうか、影響し合っているから、大事な畑の一部、ってか畑が一部なのかなー」
「雑草はね、年に数回、背が葡萄の木を越えちゃうとさすがに切るけど、切ったらそのまま土になるから放置。うちは重機を畑に入れないから、腐葉土っていうのかな、土がふかふかで生きてるんだよ」
「この辺はね、大昔海だったから、粘土質だけど貝がらも掘ればでてくる場所もあって、ほらそこの穴みれば貝だらけ。その穴はアナグマの巣だね。アナグマだけじゃなく小動物やら鳥やら、イノシシもいるけど、ちょっとはブドウ食べられるけど、しょうがないじゃんね」
「今年は、春から夏の大雨で、収量少ないけど、品質いいよー」
なんとも、不思議な葡萄畑ツアー。景色は美しく、脚はビチャビチャ。
次の畑に移動する助手席の足元に、びしょ濡れブリックが… 臭、臭過ぎる…
めちゃんこ可愛いブリックが、助手席の僕の足に蒸れ蒸れ濡れ濡れな頭を乗っけてるから、必然的に僕のスニーカーは臭臭… ヤバい、帰りの飛行機内で異臭騒ぎが起きるかも。
でも、ブリック、可愛いからオッケーだし。
Barlaの畑から次の畑に移動するクルマから、アラブ系な方々が働く畑が。ナニ?
「あー、あれはルマーケ(カタツムリ)の養殖」
ほへー、葉物野菜の餌やり、かなり肉体労働じゃんね。
「あの、アーティチョーク(カルチョーフィ)みたいなギザギザの葉っぱの野菜は、Cardi Gobbi。この辺りの名産野菜で、先っぽをバッサリ伐って、カバーかぶせて、白い茎を茹でて食べるんだ」
「ここのパン屋、ちっさいけど昔ながらのパンで旨いんだ、ちょっと買ってこー」
雨じゃないけど、露でビシャビシャだから畑仕事出来ないし、時間がある、ってんで、なんだか色々嬉しいなー。
で、自宅 兼 醸造所の近くのAchilleの畑見せてもらって。
ここはバルベーラとネッビオーロが半々。
そっから丘の上部にある自宅に1番近い畑がBricco。ここは半分が若いバルベーラ、残りは色々な品種がごちゃごちゃ混ざってんだって。
「Achilleのバルベーラとネッビオーロのブレンドって、美味しいと思うんだよなぁ。あとで味見しよう」
「Briccoってのは、丘の1番高いエリアのことで、要は1番日当たりがいい場所で。色々実験的に品種植えてて、半分はバルベーラだけど残りは白ブドウ含めナゾの品種も混ざってて」
後で試飲したり、お昼ご飯と呑んだり、Briccoは凄いワインだと思うー。
だって、バルラとかアキッレとか、熟成経ないと濃過ぎるーって思ってて。
だから、新宿のイベントでカーゼ コリーニのBricco 1996、Achille 2007、Barla 2010飲んで「うわー、カーゼコリーニって、こんな熟成期間必要なんだー、うめー、やべー!」って思ったからなんだけど。
でも、半分はごちゃごちゃ混ぜ混ぜ葡萄品種のBricco、がゆえの「若くても美味しい」、説。あるね、わかっちゃったもん。
畑から自宅 兼 醸造所に戻って、醸造所せてもらって。基本的に、発酵はステンレスタンクで熟成は木の大樽なんだけど。このエリアで伐採した木で樽作ってるから、栗の木材の樽が多いんだって。へー。
で、僕は知らなかったんだけど、カゼコリーニはプレスしなかったんだって。へ?
そうなのよ、発酵終わったら、いわゆる「フリーラン」、ステンレスタンクからジャーっと出てくる液体だけ大樽に移して熟成➡瓶詰め、なんだって。贅沢だ…
その、勿体無いジクジクの葡萄滓を、ヴィナイオータの社長のアレで搾るようにして、古い垂直プレスで瓶詰めしてるのが、キュベ「ヴィナイオータ」。そーだったんだー、だからザラザラしてるっていうか、濃厚なんだー。ってか、捨ててたって…
って醸造所見させてもらって、暖炉のあるテイスティングルームで開いてるBarlaやモスカート白のチャボ デル モレートを飲ませて貰ってたら、
グイードさんが、
「あのさー、昼メシ喰いに行こう、で町にある熟成庫も見に行こう」って。そりゃ、行くじゃんね。
ビックリしたんだけど、ホントにビックリで。
昨夜呑み喰いしたCostigliole d’Asti中心部に目立たない「Ristorante Da Maddalena」があって。
田舎町にありがちな、ピッツァメインの質素なリストランテ…
って思わせつつ、実は恐ろしい実力のお店。
ピエモンテで今まで色々食べてきたけど、料理に関してはダントツのナンバーワン。ビビったもんね。
50年前にナポリから引っ越してきた家族が経営してて、だから食べてないけどピッツァもナポリピッツァなんだと思うんだけど。
とにかく前菜もパスタもメインもドルチェもスキがない猛烈な美味しさ。さすが地元民のグイードさん、ってか事前に教えてよ…
この店の弱点は、ワイン。
普通のクラシック系庶民派ワインしか置いてないから、ワイングラスは当然ミニマムサイズのちびグラスで。
でも、この日は地元の常連グイードさん持ち込みのBricco 2019が食事のお供。
グラス小さいけど、それでも旨いBricco 2019、ってか1997は素晴らしい熟成感で美味しくて2019も既に美味しいって、どうゆうワインなのー!?ナゾ過ぎるけど、とにかく旨い。
で、「Ristorante Da Maddalena」に当日ディナーも来たんだけど、近所の酒屋 兼 ワインバー「Vino & Bottega」でジュラのDomaine de la Tournelleのを買って、
「持ち込み料払うから…」ってお願いしたら、「いいのいいの、勝手に飲みなさい」って。
次回は、マイグラス持参で行けば、完璧。
そういや、「Vino & Bottega」に怪しい日本人働いてて、「カゼコリーニで働いてて、週末夜はバイトでホールやってて」、って。
ここでは、ついでにカゼコリーニの「Nilda 2021」を2本、Romano Leviのグラッパを1本お買い上げ。てへ。
で、「Ristorante Da Maddalena」。
お昼は前菜に「赤ピーマンのバーニャカウダ」、パスタを「ポルチーニのタリオリーニ」、ドルチェを「ボネ」にしたんだけど、どれも完璧。しみじみ美味しい料理ばっかりだし、生パスタは超日本人好みというか、弾力とキレがバッチリ。生パスタはおばあちゃんが担当なんだって。
ドルチェのボネまで最高レベルに美味しいから、「今夜も2人で来ていい?」って娘さん(五十年前に娘さんだったオバさんカメリエーラ)が「もちろん、今夜はトリュフも入るし」…
ん?まさか、この庶民的な店だし、ソラミミ…
と思ったら、メニューに「白トリュフコース」って紙が追加されてて。ふむふむ…
もう白トリュフのタヤリンは1回食べたしなー、でもお昼のこの店の料理クオリティからすると…
ってんで、頼んでみたわけ。
で、ビックリ仰天したのが、前菜の「白トリュフ掛け子牛のカルパッチョ」。
白トリュフ除いても、人生で1番旨いカルパッチョやんけー!おーいシェフー、どうゆうことー!
ひゃー旨い、クオリティ高過ぎるし、無駄な飾りとか無し。正統派のイタリア料理の一皿。
うーん、なんなんだー…
昼に続いて同じ手打ちパスタ タヤリンにバターと白トリュフ。これも超ハイクオリティ。
トリュフぶっ掛けパスタのベースは無塩バターなのよね。有塩バターがっちり効かすと、トリュフの香りが邪魔されるというか。ここは完璧。
そして、メインの煮込み、「Brasato di vitello」。単純な煮込み肉に見えて、これもメチャ旨い。
実は翌日の夜、Braの某店で全く同じメニュー食べたんだけど、全然違うし。同じ赤ワイン煮込みでも、肉自体の質(煮込みにはゼラチン質がある部位のほうが旨いじゃん…)も、ソースも、全然違って。シェフすげー!
あんまり美味すぎて、メインまで食べたあとでシェフに、「スパゲッティ ポモドーロ、一皿食べたい…」ってお願いしてみて。
そしたら、パパパっと。ナポリ人のポモドーロ、そりゃ、ね。
〆は再度ボネ。あー、なんて最高のお店。Costigliole d’Asti、凄すぎ。また絶対来るかんね。
で、ハナシは遡って、お昼のあと。
Costigliole d’Astiのお城は、今は一部がお役所だったり、一部は改装されて外国人向けの料理学校になってるらしいんだけど。
その地下エリアの一部が、カゼコリーニの瓶熟成庫になってるってんで、見せて貰って。
すでにお昼呑んだBricco 2019が素晴らしく美味しかったからアレだけど、グイードさんのお父さんのロレンツォさんの時代からのバックヴィンテージが… こりゃ王様のワイン庫じゃんね。
いやはや、朝から長い事付き合って貰っちゃったけど、グイードさんに大感謝。
ってか、カゼコリーニが凄いワイナリーだって理解できたし、Costigliole d’Astiが凄い村だって理解できたし、大好きになったし、絶対また来るって事だね。
一足しか持ってきてないスニーカーがブラック臭いのが心配だけど、いよいよ明日ワイナリー「Cascina Tavjin」訪問して、Braに一泊したら帰国便。
この村の料理学校に3ヶ月くらい通いたいなぁ…
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